テーマ   JSA

まずは、朝鮮戦争についてのおさらい。

今から51年前の6月25日。
約10万の兵を擁した北朝鮮軍は38度線に設定されている、国境線を各所で強行突破、
一気に韓国へと攻め込んで朝鮮戦争が始まった。
意表を突かれた韓国軍は敗走、意気揚々と南下する北朝鮮軍は3日目に首都ソウルを占領した。
(ソウル陥落)
この行動に対して国連安保理はこの行動を北側による「南侵」と認定して軍事制裁を決議、アメリカ軍
を中心とした国連軍が前線に配備され、国連軍最高司令官には日本占領のシンボル的存在であった
、マッカーサー元帥が任命された。
しかし、形勢不利な状況を打破するはずの国連軍はズルズルと敗退を続け8月には釜山を橋頭堡に
南部へと追いつめられた。
起死回生の一策としてマッカーサー元帥は9月中旬、ソウルの西方40キロにある仁川
(現在は金甫空港に変わって韓国の国際空港ができた場所)から敵の背後を突く敵前上陸に成功。
挟撃された北朝鮮軍は総退却となり、国連軍は同月末、3ヶ月ぶりにソウルを奪還した。
(仁川上陸作戦)
さらに継続追撃を行った国連軍は10月19日北朝鮮の首都、ピョンヤンを占領なおも北上を続けた
が、同月末の中国の参戦から再び形勢が逆転。
年末にかけて国連軍は再び撤退を開始、中・北連合軍は翌年の初めに再びソウルを占領した。
国連軍も反攻を試みて、3月14日再びソウル奪還に成功したが38度線を挟んでの攻防が続く一方で
停戦の動きが出はじめた。
この流れの中で、マッカーサー解任、休戦予備会談、米軍機による中朝国境への爆撃などを経て
1953年7月27日ようやく停戦協定が成立した。
そして、戦時下にあってもゆったりとした農村地帯だった国境38度線の村が俄然注目を集めた。
全世界注視の中、この農村地帯に一つの名が付けられる。
「板門店」と呼ばれるようになったこのエリアに誕生したのがJSAである。
JSAというのは、Joint SecrityAreaの頭文字を取った略称。
国連軍と北朝鮮による「共同警備区域」のこと。
ここには当事国以外に「中立国監視委員会」が設置されており、韓国側にはスウェーデンとスイスが
そして北朝鮮側にはチェコとポーランドの委員が駐在していたが、94年の北朝鮮の軍事停戦委員会
不参加を受けて代表団を引き上げている。
そのため現在は、北朝鮮の代表団である「朝鮮人民軍板門店軍事代表部」が設置されている。

★アバウトなあらすじ★

板門店にある北朝鮮側の歩哨所から激しい銃撃が起きた。
これを合図に国境線を挟んで韓国と北朝鮮の壮烈な銃撃戦が始まる。
そして、事件の解明は両国の合意のもと中立国監視委員が担当することとなった。
事件を担当するのはスイス人のソフィー・チャン。(韓国の妖精イ・ヨンエ様)
韓国籍の父親を持つ女性将校である。
韓国側のイ・スヒョク兵長(イ・ビョンホン)は「北側に監禁されて、やむおえず銃撃して脱出した。」と
主張、北朝鮮側の生き残りであるオ・ギョンピル仕官(ソン・ガンホ)は「南の兵士が国境を越えて上尉
と兵士を殺害したテロ」と主張して双方の意見は真っ向から対立する。
歩哨所で撃たれた11発の弾丸、その夜なにがあったのか、事件を解明しようと進むうちにソフィーは
父親の秘密を知る事になる。
そして、ソフィーの解任直前スヒョクが語りはじめた真実とは......。

韓国では「シュリ」を超える大ヒットとなった当作品だが、個人的には「シュリ」の方が見応えがあった。
しかし!この作品がつまらないかというとそれは違う。
3部構成で展開する物語はスクリーンに目をむけさせるだけのパワーがある。
それに、日本では4億5千万円でこれほどの映画は作れない。
シュリの制作費3億円もそうだがこの程度の予算でヒット作を編み出せる韓国映画界は
すばらしいとすら思う。
シュリとの決定的な違いは「民族の分断」という問題に真っ正面から取り組んでいるところにある。
多くの日本人にはこの「民族の分断」というテーマに、リアリズム感じられないからではないか?
この民族の分断が起きた原因の一つには、日本が行った37年間の占領という事実も
影を落としているはずだ。
昨年の韓北首脳会談を経て、一度は「雪解けムード」に向かった両国関係だが分断から50年以上
経っても未だに両国は「休戦状態」であって、決して戦争が終わったわけではない。
劇中で使われる台詞がある「結局敵同士なんだ.....................。」
この一言が「分断」という重い歴史を現しているようにも思えるのだ。
話の作りも及第だが、ソフィー役のイ・ヨンエ様の美しさは格別である。


MOVIE TOPへ