タイトル:夏の庭

著者名:湯本香樹美

出版社:新潮社

価格:¥400

ISBN:4―10―131511―6

◆極々簡単アラスジ◆

 木山、山下、河辺は小学生6年生の3人組。
悪ガキというほど悪くもないし、中学受験のために塾には通っているが、それほど
優秀というわけでもない。
じつに平均的な主人公達である。
ある日のこと、山下がおばあちゃんのお葬式に出席したのを発端に、河辺がとんでもない
事を提案した。
曰く「近所に住む一人暮らしのおじいさんが、死ぬのを発見しよう。」
当然、木山と山下は反対するが「本人には絶対迷惑をかけない。」という約束の
もと計画はスタートする。
数日張り込みを続けた後あることがきっかけで、見張っていたおじいさんと
3人組は交流を持つようになる。
その後、少年たちはおじいさんのもとでいろいろな経験を積んで行く。
そして、サッカーの合宿から帰った3人組が見たものは.........。

◆感想◆

 木山と親友の山下と河辺、それぞれが日常を送る中で悩んだり
周りの変化に戸惑ったりしながら、生活している様子がきちんと書きこまれている。
登場人物それぞれのキャラクターが、しっかり出来ているので読んでいて疲れない。
一番普通の木山、のんびり屋の山下、メガネで短気な河辺......。
少年3人組を形成する基本パターンといえまいか?
この3人組がイキイキと物語のなかで動き回るので、テンポが実に良い。
気持ちが3人のどれかに入ってしまうんである。
 「ひと夏の思い出」というフレーズは、この時期どこかで必ず使われている。
大人にせよ子どもにせよ、それぞれに「ひと夏の思い出」を有しているはずだ。
それが良いものか悪いものかはともかく。
この物語は、少年3人組の「ひと夏の思い出」である。
小学校6年生という不安定な時期に大きな経験をしたことは。一生3人組の中で輝きを
放ちつづけるであろう。
そして、この夏を経験したことで明かに成長したことも。
さらには夏がいつもより少しだけ長かったこともだ。
 木山が「ぼく」という一人称で語る文体に、単純な俺なんぞは隣で木山の話を聞いている
気分にさえなる。
これも「ひと夏の思い出」というキーワードがなせる技なのか?
季節は晩夏から初秋へと移り変わる季節。
俺個人は夏に対しての思い入れなんてとうに捨てているが、こういった物語を通じて
夏の記憶に浸るのは悪くないと思う。


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