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タイトル:霊験お初捕物控シリーズ「震える岩」「天狗風」

著者名:宮部みゆき

出版社:講談社

価格:¥695(震える岩)¥781(税別)

ISBN:4-06-263590-9(震える岩)
     4-06-273257-2(天狗風)

◆時代小説のこと◆

時代小説といえば池波正太郎を筆頭に男性作家の作品しか
読んだことはなかった。
宮部みゆきの時代小説はたまたま駅で買った初ものがたりを読んでみたら、
予想以上に面白かったので、その後ポツポツと読み進んでいくうちに、この
”霊験お初シリーズ”にぶつかったのだ。

◆お初のこと◆

初登場時お初は16歳。
通町で岡っ引きをつとめる、兄・六蔵とその妻およしとの3人で暮らしている。
この義姉妹は一膳飯屋の「姉妹屋」を切り盛りしている。
日本橋の近くにある立地も手伝って店は繁盛しているようだ。
お初はここの看板娘だが、誰にもない能力がある。
それは「人に見えないものが見え、人に聞こえないものが聞こえる」能力。
頭の奥が不意にずんと痛んだときや、古着や遺留品に触れたときにその力は
覚醒するのだ。
現在でいえば、エスパーとかサイコメトラーとかいうのだろうか?

◆御前様◆

作中「御前様」と呼ばれて、シリーズの脇を固める南町奉行根岸肥前守鎮衛は
「耳袋」という書物を著すことを趣味としている。
これは町中で起こった、不思議な現象を書き留めておくもの。
そんなことにアンテナを張る御前様に、お初のことが耳に入るのも当然である。
こうして御前様と交流を持ったお初はたびたびお役目を授かる事になる。

◆ストーリー◆

第1作「震える岩」は貧乏長屋で起こった「死人憑き」から事件がはじまる。
ろうそくの流れ買いを生業としている男やもめの吉次についた死人憑きは、
普通死人憑きと違い、憑かれた死体がどんどん若返っていく。
このことを不審に思ったお初は、御前様の了解を経て探索に乗り出すことになるが、
ここで、一人の男を紹介される。
与力見習・古沢右京之介。
この右京之介、父に吟味方与力の古沢武左衛門重正、通称”鬼の古沢”
と恐れられる男を持つのだが、息子の右京之介はまったくの正反対。
こんな男が鬼の後を継げるのか?と役所でも噂になっているらしい。
いきなり紹介された頼りなさそうな右京之介だが、御前様の命とあっては断れない。
こうして凸凹コンビの探索が始まるが、日を重ねるにつれて右京之介との距離も縮まり、
事件も解決に向う。

第2作「天狗風」は立て続けに起きる、嫁入り前の娘の失踪事件がテーマ。
手がかりは燃えるような朝焼けとすさまじい強風、そして桜。
あいかわらず、姉妹屋を切盛りする妹を見ては「まともな娘なら縁談だって来るころだ。」
とぼやく兄・六蔵を尻目に、いっこうにしおらしく娘らしくならないのだ。
最初の事件から数ヶ月。
17歳になったお初の元へ、身辺の環境ががらりと変わった右京之介が夜桜を誘いに
やってくる。
しかし、よくよく聞いてみるとそれは御前様の誘いであるという。
人をさらう風の事件に興味をもった御前様は、2人に探索を命じる。
事件を調べて歩く、お初を見つめる影の正体は何か。
事件はまったく違う事件を炙り出していく。

◆感想◆

どちらも「それほど厚くはないが、薄くもない」というサイズの文庫本。
講談社文庫は、数年前から活字が大きくなってるからその分ページ数が
増えた。
という説もあるが、この際それは置いておく。
どちらも、伏線が縦横に張られていてそれがイッキにラストへと流れ込んでいく。
そのため、ページ数の割りには速いペースで読めてしまう。
ここで書いたストーリははっきりいえば、作品の入口にも立っていない程度の
ものである。
実際はぎっしりと色々な話しが盛り込まれていて読み応えはある。
それが破綻してないのがすごいのである。
2冊読んでもそれほど時間はかからないが、読後は「すげえ読んだなあ」と
思えるはずだ。


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