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タイトル:マルサン-ブルマァクの仕事 【イシヅキ】三郎おもちゃ道

著者名:くらじ たかし

出版社:文春秋(文春文庫)

価 格:本体¥533(+税)

ISBN:ISBN4-16-765607-8


◆マルサン-ブルマァクとは?◆

玩具メーカーのマルサン商店は、1923年(大正12年)に浅草田原町に産声を上げる。
当初は設立者である石田直吉の名をとって「石田製作所」と名乗っていたが、昭和22年に
マルサン商店という屋号に変更された。
この頃は、ブリキ玩具と合わせて双眼鏡や望遠鏡なども取り扱っていたという。
戦後の玩具界においてエポックメイキングな出来事は昭和28年に販売されたブリキのキャデラック。
当時の価格で¥1,500というから、玩具の枠を飛び出してもはや高級品であろう。
その後、昭和33年日本初の国産プラモデルノーチラス号を発売。
「プラモデル」「プラカラー」等の名称はこの頃にマルサンの商標として登録されたが、倒産後
商標権は解除されて各メーカーが使用できるようになった。
昭和41年には「ウルトラQ」「ウルトラマン」のソフトビニール人形を発売、第一次怪獣ブームの
一端をになうが、ブームの沈静化と共に昭和43年倒産(倒産時はマルザン)
昭和44年株式会社マルサンとして再出発。
時を同じくして、マルサン-マルザン時代の3人がブルマァクを設立する。
マルサンはその後、オリジナル怪獣シリーズを出したりウルトラマンAのミニソフビを出したり
するがOEMメーカーとして、玩具界で雌伏の時を過ごす。
対してブルマァクは、創業後ブルドーザーなどの玩具を出しつつマルサン時代の怪獣ソフビも
復刻していく。
特に追い風となったのは昭和46年ミラーマンの放送によってはじまった第2次怪獣ブーム。
これによってブルマァク快進撃を続ける。
昭和47年にはトリプルファイターを単独スポンサーとして放映。
この頃より、徐々にスローダウンした業績を取り戻す事ができずに、昭和52年ブルマァクは倒産。
この倒産劇の影響をもろにかぶったのが、アニメ番組の「メカンダーロボ」である。
この2つの会社の倒産に立ち会った男が、この本の主人公である【イシヅキ】三郎である。

◆昭和玩具史の生き証人◆

昭和43年12月20日。
暮れも押し迫ったこの日に会社が倒産した。その現実を目のあたりにしながら男は回想をはじめる。
老舗玩具会社の倒産、男のモノローグでこのドキュメントの幕が開く。
男は1951年、15才で故郷を離れて社会人となった。
名前は【イシヅキ】三郎。本編の主人公である。
叔父の紹介で入社した会社の名はマルサン商店。
光学玩具やブリキ玩具を製造、販売、輸出するのを主としていた会社である。
少年時代から、手先が器用で自家製の拳銃まで作ってしまったような三郎だったが、
玩具に対しての思い入れは皆無。
昭和11年に生まれた三郎にとって、玩具とは買ってもらうものではなくて自分で作るもの
だったようだ。
そのため、玩具会社に入ったという事よりも「住み込みで三食が保証されている」ことの方が
重要だったのだろう。世相としてもまだ、物も食料も少なかった時代、今とは違う就職動機
があっていい。
しかし、そんな男が日本玩具史から外すことができないスーパーコンテンツを生み出すのだから、
世の中はわからない。下働きからはじまって、営業、企画制作と仕事を任されてきた三郎は、
国産初のプラモデル発売などの大きな節目に立ち会ってきた。
さらに、玩具業界のあり方を変えた大きな動きを三郎は体験する事になる。
男子玩具の中で「ソフトビニールの怪獣人形」といえば、男の子ならば一度は手にするアイテム。
昭和41年TBS系列で放映された「ウルトラQ」は子供たちの間で大人気番組となった。
まだ、業界内で「マーチャンダイジング」という言葉すら確立されていなかった時代。
ミニカーや電車といった玩具が多数を占める中で、キャラクター玩具は今のように大きな市場が
出来上がっていなかった。
そんな中での怪獣人形の発売である。
番組の人気に後押しされた、怪獣たちは爆発的な大ブームとなり一躍玩具業界の牽引車となった。
これは「ウルトラQ」終了→「ウルトラマン」放映で頂点を極める。
第1次怪獣ブームの到来であるが、ウルトラセブンの終了に合わせるようにブームは収束。
スロットレーシングの、先行投資の赤字が足を引っ張るかたちで、昭和43年マルサンは長い歴史を閉じる。

◆ブルマァク誕生◆

会社の整理が終わって、三郎は気の合った仲間3人で新しく会社を起こす。
その名は「ブルマァク」。
私的な話になって恐縮だが、この稿を書いている俺にとってマルサンの玩具は、
伝説の玩具ではあるが触った記憶がない。
「すごいプレミアのつくソフビ」というイメージしかないのである。
しかしブルマァク製品は、ちょうど俺の幼年期から小学校2年までの生活の中に
ぴったりとはまってくる。
この本の巻末に掲載されている、商品リストをみて「ああ、俺持ってたわ。」という
玩具が多くある。そんなこともあって、この本もマルサンよりもブルマァクの名前に引かれて
買った部分は大きい。
話を戻して.......。
マルサンの失敗から堅実に商売をはじめるブルマァクだが、長男や姪の友人が怪獣玩具を
奪いあっているのをみてピンとひらめくものがあった。
それがきっかけとなって、マルサン時代に販売したソフビ怪獣のを復刻販売させることになる。
ちょうど、ウルトラQからウルトラセブンまでが再放送されていた時代。タイミング的にもバッチリだ。
怪獣ソフビは飛ぶように売れた。
経費を節減するための流通システムの確立や、広告代理店を使ったマーケットリサーチなど
新しい手法を取り入れて、ブルマァクは業績を伸ばしていく。
この頃には日本プロレスの、ジャイアント馬場、アントニオ猪木、坂口征二、吉村道明のソフビ化も
手がけている。
ウルトラ以外にも鉄人28号や、マグマ大使などが商品化された。
昭和46年ミラーマンがフジテレビ系で放映されると、第2次怪獣ブームが加熱。
結果的に、この時の大増産がブルマァク倒産への引き金となっていく。
俺はまったくの不勉強で、ブルマァクがマルサンから生まれた会社だったという事をこの本を読むまで
知らなかった。
そしてなによりも、この両社が「キャラクター物」以外の商品も多く出してる事をはじめて知った。

フィギュアブームに乗って、マルサンもメーカとして近年復活した。
その情報はhttp//:www.marusan-toy.comで知ることができる。
そして本編の主人公三郎も、現在も玩具業界に身を置いている。
カプセルトイのブルマァク魂は三郎の監修によって発売されている。
テーブルの上に、怪獣をならべて秋の夜長この本を読むのもいいのではないか?

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